Magazine Oi!
トマトは種を抜いてから食え
なんて今ごろ教えられても
すでにトマトは、腹の中で芽を出して
根も張って、とっくに手遅れ
- トマト男
2017-08-10
魚は死ぬる
村の娘が釣りをしている。
釣った魚を針からはずして地に投げる。
魚は死ぬる。
ぴんと跳ね上がって、ぱたりと落ちて死ぬる。
すると貴婦人が、
「おやまあ」
これは都会から来た貴婦人です。
避暑で来ているのです。
どうしてあの魚はまだ生きている身でありながら、
死なねばならないのでしょうか。
そういううちにも、また釣り上げられて、
「おやまあ」
ぱたりと落ちて、また死ぬる。
2017-07-19
日記
一日中キジバトが鳴いている。

ボグー、ボッボー

休みなく鳴いてるわけではないが、気がつくと鳴いている。
夜中も鳴く。
午前二時に鳴く。
窓の外に遅い月が出ている。
明け方の四時に鳴く。
わたしは早起きなので、四時頃の鳴き声は目覚ましにちょうどいい。
起きて朝食の支度をし、息子を起こして食べさせる。

息子には転校先を探してやらなければならない。
前の学校に何も言ってこなかったから、今頃は長期欠席扱いだろうか。
市役所に問い合わせて、転校の手続きを教えてもらうこと。
2017-07-17
出郷
そのカネを持って海沿いの町から姿を消した。

「父さん、ぼくらはどこへ行くのでしょう」
「いつかわかるよ」
「いつかって、いつですか」
「大人になればわかる」
「いつ大人になるのですか。父さんもですか」

列車の外の空を半分、
誰かの髪が覆って、風に吹かれていた日和。
2017-07-16
幽霊書店・メモ


Haunted って、なんだっけ?
わたしはミシンのセールスをしている。
アメリカで生まれてアメリカで育ち、国外に出たことはない。
それなのに、わたしはアメリカの言葉が苦手らしい。
なんだっけ、Haunted って?

店頭のラックに政治パンフレット、投資や料理のハウツウ本。
店の中をのぞくと、本棚に本がつまっている。
おもての看板に Haunted Bookshop。
ということは本屋。これは本屋にちがいない。

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2017-07-09
医者が「あ、あー!」と
四月の中頃、風邪をひいたようで医者に行った。
熱が九度を超えていた。
喉をのぞいた医者が、
「あ、あー!」
と声を出した。驚いたような声だった。
なぜ驚いたのか説明はなかった。
あとになって考えてみたが、
医者は驚いたのかもしれないし、驚かなかったのかもしれない。
驚いたとしても、
「ああ、驚いた。やっぱり風邪だ」
その程度のことだったか。
五年ぶりくらいでかかったその内科医は
以前より少しやせて、
白髪の目立つ頭になっていた。
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