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2005-09-03
亡国
「国は消えても山河は残る」
亡国の詩人が、
のんきに歌いながらやってくる。
「いい時代でしたね」とわたし。
「おかげさまで」と詩人。
わたしは少しだけ彼をうらやましいと思う。
なぜなら、こちら廿一世紀は、
国が消えると、
山河も消えてしまうような時代であるから。
「あまり深刻そうでもないな」と詩人。
「ええ、まあね」とわたし。
ほんとうのところ、
消えようが、消えまいが、
どうってことはないのである。
多少の意思は通じたか、
それから二人で、
歌のつづきを歌った。