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2011-11-06
風の港
飢えた姉弟が
倉庫の陰でひそひそ
港はいつも
最悪の港だから
風の吹かぬ日の港など
どこにあるものか
波の荒れぬ日の港など
どこにあるものか
港はいつも
最悪の港だから
一人の密航者も
溺れ死んだことのない港など
どこにあるものか
風にきしむドアを
開け放ったまま
ベッドの上で
手首を切る女のいない港など
どこにあるものか
荷役と酒の日々に疲れて
港を逃げ出す男がいたとすれば
それはむしろ
幸運というもの
眇(すがめ)の少年と
首筋に垢(あか)をためた少女の
哄笑に送られて