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2011-11-26
「他人の家ですが、どうぞ」を映像にするメモ
しもた屋風の家の前。
「しもた屋」には「風」が付き物。
和風とか洋風とかもある。和でも洋でもない。断定はしない。
和とは言い切れないが和風である。洋と決まったわけではないが、洋風である。
「しもた屋風」も「しもた屋」と言い切ってしまうと嘘になる。
ほんとにしもた屋なの? しもた屋というのは、かつて商売をしてて、今はやめてしまった家を言う。ほんとにお前のところは商売をしてたの? そう問われれば、うちは商売をしてたわけではないから、「しもた屋」ではない。あくまでも「しもた屋風」である。
そのしもた屋風の家の前に女が立っている。
「他人の家ですが、どうぞ」
女は和風。でも和服ではない。ただ、なんとなく和風。
じっさいに着てるのはワンピースかもしれない。

この詩をミュージックビデオにしたいと思う。元詩はこちらのメメクラゲ

電車線路を横切って
はしごを登ると三尺の露地
「他人の家ですが、どうぞ」
いつのまにか女の連れができていて
言われたまま入ると
医者が患者に注射をしている
ははあ、これは喩えだな――
ぼくもあのクラゲに刺された一人だったのだ
海が夕日に焼けている

ワンピースを着ているかもしれない女が、しもた屋風の家の戸に手をかけているようないないような感じでいる。むろん、こちらを見ている。こちらの主人公、もしくはわたし。

俺/私は絵がかけないはずなのに、描けると思っている。
それで以下はモノクロのアニメということにする。

電車の踏切を男が渡っている。
手前で電車が止まっている。
遮断機が逆についていて、歩行者が渡っているあいだ、電車が止められているのである。
渡り終わるとはしごがある。
縄ばしごかもしれないが、ふつうのはしごでもいい。
男ははしごを登る。
天上に穴が開いている。
その穴から顔を出すと、三尺の露地。
どこかで花が咲いているとよかったかもしれない。踏切の周囲とか。
三尺の露地にも鉢植えとかある。
あれっ、と私は思う。
いつのまにか女の連れができている。
いつから一緒だったのだろう。
しもた屋風の家の前にくると、女が言う。
「他人の家ですが、どうぞ」
どうやらこれがメインテーマらしい。
すでにメインテーマを冒頭で出しているが、そういう手順でいいのか。
三尺の露地にしもた屋はあるか。ふつうはないが。
ともかく女にうながされて、私は家に入る。
背もたれのない丸椅子に患者がかけている。
医者が患者に注射をしている。
それで私は気がつく。
ああ、これは喩えなのだ。自分はメメクラゲの登場人物なのだ、と。
私はミュージックビデオ「他人の家ですが、どうぞ」の台本をつくるつもりでこの文を書きはじめたのだが、なかなか台本にならない。
台本にならないまま、終わってしまうのだろうか。
そういう私の××を見透かすように、医者がにやっと笑う。
部屋の正面には壁がない。
正面は海である。
海は赤い。
もとの「ネジ式」のように飛行機や軍艦が浮いていたりして、飛行機は空に、軍艦は海に浮いていて、戦争が行なわれていてもいい。

どうやって動画を終わらせるか。
詩だったから、「海が夕日に焼けている」でごまかせたかもしれないが、映像ではどうか。モノクロだった映像が一気に赤く着色されるという程度では、やはりごまかしだろう。

道具はどうするか。
マウスで描画というわけにはいかないから、ペンタブレットみたいのが要る。
編集ソフトは? 手順は?
やはり一枚一枚描いてつなげてゆくのだろうか。



大事なことに気がついた。
先にオーディオをつくってはいけない。
まずムービーをつくる。ふつうの PV とは逆。
先にオーディオがあって絵をつけるのはむずかしそう。
メロディや伴奏はいつでもできるのだから、まずオーディオのための環境=ムービーを用意して、それから音楽をつくる。舞台ができたら出演しますみたいな。

遮断機の音その他リアルな音は必要か。
必要ないのでは。すべて作り物であることが明らかな音で片付ける。