Magazine Oi!
2016-01-18
節分の夜
夜中に玄関のチャイムが鳴って起こされる。
ドアを開けると女が立っている。
冬のコートに手袋をして防寒はできてるようだが、少しふるえている。
こんな時間に女が訪ねてくるとしたら、怨まれているか惚れられているかだが、どちらも思い当たらない。
知り合いだろうか。よくながめてみるがわからない。かわりに般若のような顔がダブって浮かぶ。焦点の合わせ方によって鬼女の顔が浮かんだり消えたりする。これが鬼女だとすれば怨まれていることになるが、やはり心当たりはない。

「時差をうっかりしていた」と女が言う。

そういえばさっきから騒がしかったなと思い出す。夢の中のことではなく、実際に外がうるさかったのだ。
近所の家々に灯りがついていて、「鬼は外、福は内」の声がきこえてくる。
このごろ町内の時差が狂っている。それで夜中に豆まきがはじまったのだろう。節分の時期も近隣の町よりだいぶ早まったらしい。

自分の部屋はアパートの二階だが、一階の部屋でもチャイムが鳴る。男が起き出してドアを開けると、自分のところと同じように鬼女が来ている。
「ぎゃっ」と叫んで逃げ出そうとする男。
女が爪の伸びた両手で男の首につかみかかる。
一階の男は女に怨まれている。