to top page
2016-09-07
ローマ便り(第四信)
話をつづけるにあたり、質問を一つさせてもらいます。

ある六人家族に起きたこと。
幼い弟が幼い妹をさそって庭に出る。
池で鴨が泳いでいる。
その鴨を捕らえようと池に入った妹が溺死する。
残りの家族(父親、母親、息子、娘)が駆けつけると、池に浮かぶ水死体を弟が身動きもせず見つめている。その狂人のような目に家族は恐怖するが、父親はすぐ目をそらして、それきり死体にも弟にも視線をもどそうとしない。
「こんなことは人に知らせるべきでない」
息子が強く主張して、事件はなかったことにされる。
そのときピストルの音が鳴る。
弟が植え込みの陰で自殺を図ったのだった。
弟の死が確認され、弟妹を欠いた四人家族で暮らしが再開される。

では、質問です。
上の出来事を舞台にかけるとして、彼らの役は人間と人形のどちらが演じるのが適切でしょうか。
観客がどちらにリアリティを感じるかという観点から考えてください。