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2017-03-22
ある晩
この野郎ふざけやがって!
なにか溜まってたのだろうな、おれ
たまたま入った裏通りの小料理屋で
夜でも朝でも持ってこい!
と怒鳴ったら
てんこ盛りの夜を
どさっとテーブルに叩き付けられて
いや、あわてたよ
しかもべたべたと粘着なやつらしく
たかが夜のくせに
人間関係を迫ってくるではないか
違うんだよおれは
人間関係はもういいんだ、勘弁してくれ
希薄な関係な、わかるだろ
おれ、そういう生き方してるんで
いや、すまん、すまん
もう怒鳴ったりしないからさ
あやまったり慰めたり
あれこれ小一時間もやったかな
急にさらっと
ほんとに急でした
さらさらっと粘りがとけて
そのまま外の闇へ
霧みたいに…
いや、見届けるひまもないまま
消えてしまいました
なんだかこっちまで
しょんぼりしてしまうような消え方で
かわりにもう一度
おやじを怒鳴ってやろうかと
炊事場をのぞいたが
すでに灯落ちて、人影は無し