Magazine Oi!
2017-03-30
小話
元退という処士がいた。
処士とは、仕官をしていない在野の人物。「仕官はしていないけれども」というニュアンスがあり、そこそこ優れた人物をいった。
その元退はすでに七十をこえた老齢というのに、口でものを食べた。
歯がないのに、口で食べるのである。
どうして口で食べるのか、周囲の者がいぶかって訊くと、
「ようやく今になって、歯が邪魔者だとわかった」
と、いっそう元気よく食べてみせた。