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2018-08-13
杉浦日向子の佐幕派体質、三題
杉浦ファンなら今さらだろうが、彼女の佐幕派体質に関して。

何しろこれ迄の維新史といったら、官軍というか、政府側による作為的な押付でしょう。
我々はあえて佐幕派の立場、或いは庶民の視点による維新史を採集している訳です。

これは短編漫画「駆け抜ける」の冒頭。
雑誌記者が明治維新の体験談を古老から聞き出そうとしている。
作者はこの作品を描くために資料を調べる自分を、古老の証言を聞く雑誌記者に重ねているはずで、記者の言う「佐幕派の立場」はかなりの程度まで作者の立場でもあるだろう。

グルメとして知られており、食に関する著書も多い。無類の蕎麦好き(蕎麦屋好き)で、ソビエト連邦が崩壊した1991年に仲間と「ソ連」(ソバ好き連)を立ち上げ、その中心として活動した。

Wikipedia の杉浦日向子の項から。
ソ連の崩壊直後に「ソ連」を名乗ること。これこそ佐幕的精神ではあるまいか。一般化すれば、旧体制の崩壊を悼むこと。徳川幕府にかぎらず、消滅したどんな政治体制にも言い分はあったはず。もちろんソヴィエト連邦にも。

維新は実質上維新これあらたなる事はなく
末期幕府が総力を挙げて改革した近代軍備と内閣的政務機関を
明治政府がそのまま引き継いだにすぎない。
革命(revolution)ではなく
復位(restoration)である。

『合葬』の最終章にかかげられた作者の言。
明治政府の軍備と政務機関は幕府がすでに用意していた、と。

長編漫画『合葬』は、上野戦争前後の江戸と彰義隊の運命を、それぞれの事情で彰義隊にかかわった若者たちの交流を軸に綴り、生きて上野を脱出した若者の一人が会津を目指して道をたどりはじめたところで終わる。
『合葬』の続編か後日譚があるとしたら、どんなことが描かれたのだろう。
会津で待ち受けているのは、同じ戊辰戦争の負け組としての、さらに知られた悲劇なのだが。