Magazine Oi!
2011-12-09
人力社会
日暮れとともに車がわいて出る
そういう社会である
「日が暮れます」
と車夫がいう
「日が暮れるな」
と車上の先生がいう
先生は人力車で登下校している
保険会社の重役が車で料亭に向かう
芸者が検番から車で出勤する
「おや、日が暮れるよ」
と芸者もいう
日暮れのあいさつなのである
市内のそこらここらで
暗闇が生まれてる
デパートで買いすぎた奥様が力車で家に帰る
女中も力車でついて行く
「日の暮れですな」
と誰ともなく声を掛けあう
秋空に群れるトンボみたいに
人力車がわいて出る
そういう時代のそういう日暮れである