Magazine Oi!
2016-01-12
池袋IQバトル
昨日、池袋で。
西口の公園で喧嘩だというから行ってみると、IQの足りてる連中と足りない連中が鉄パイプで叩きあっている。双方で百人くらいか。まだパイプの先っぽでやりあってるだけで、大ごとにはなってないが、人数が多いから駆けつけた警官も手を出しかねている。
野次馬が公園を囲んでいる。
「やれやれ」と嘆く者がいるかと思うと、「やれやれ」とたきつける声も飛ぶ。どちらも「やれやれ」なので、文字では書き分けられない。
ふと横を見ると、フィクサーのWが立っている。まだ30そこそこの年頃だが、Wが仲裁に入って収まらないもめごとはないという西口一帯の名物止め男。喧嘩も強いらしいが、喧嘩より仲裁が好きという好漢。
「止めないの?」ときくと、Wは口をとがらせて「うう」とだけ言う。
どうしたのだろう。まさか怖がっているわけではあるまい。
「こいつは、ちょっと」とW。
「わけがありそうだね」
「大ありっす。あのね、俺って馬鹿っぽく見えるでしょ」
まあ、そう見えないこともない。
「それにIQも足りないし」
「足りないの?」
「足りない、足りない、全然足りないっす。だからね、俺がここで出てったら、足りないほうの仲間かと思われる。仲介役としちゃ、まずいっすよね」
なるほどと思う。それにしても、ずいぶんクレバーなやつだ。これでIQが足りないというなら、IQの測り方が間違ってるか、IQという基準そのものが間違ってるかだ。
パトカーがつぎつぎにやってくる。
そのうちの1台がWをみつけて、降りてきた私服や制服がWを取り囲む。
「おまえだな、この騒ぎを起こしたのは」
「違いますよ、見てるだけじゃないっすか」
両腕を左右からかかえられてパトカーに連れ込まれるW。
Wと地元の警察は持ちつ持たれつみたいなものだから、そのうち騒ぎがおさまればWも解放されるだろう。パトカーの連中もWを拘束したことで、とりあえず仕事をしたことにはなるわけで。
そのとき、膠着状態だったバトルが一気に動く。
仮装行列みたいな格好の連中が数十人、公園に乱入してきてIQの足りてる連中に襲いかかる。学園祭の応援団みたいだったり、赤い陣羽織を着てたり、背中に旗指し物を差していたり、どいつもひらひらびらびらの派手な扮装で、成人式帰りの一行だとわかる。
式帰りの連中は素手で殴りかかったから、鉄パイプで逆襲されて血だらけになるが、圧倒的な人数の差で次第にIQの足りてる連中が押されはじめ、やがて鉄パイプを捨てて逃げ出す。
IQの足りない連中と助っ人の成人式帰りがバンザイを繰り返す。
その声が周囲のビルからはね返ってこだまする。
思いがけずおもしろいイベントにでくわした。そんな感じで散りはじめる野次馬たち。
パトカーからWが出てくる。
「もういいの?」
「被害届は出ないから、事件にはならないって」
「あいつら血だらけだけど」
「先に手を出したんだから、届けなんか受け付けないって言ってます」
以上が、昨日自分が見たことの一部始終。というか、昨夜から今日にかけてテレビで「流血の成人式」とかいって放送されていることの実相。
喧嘩の背景にIQ分配の不公平がある。でも、解決策なんてあるのか。
「平等とか言いますよね。俺はそういうのがいいと思います」と別れぎわにWが言った。「身長とIQを足すと誰でも同じになるとか、どうなんすかね」