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2006-04-16
怪盗デュヴァル (2)
国王陛下の仰せには
おお、愛(う)いやつよ
能ある小姓は少ないものを
これでまた、才幹一人わが手元から消え
ナイトが一人増えるのか

さて、その翌日
チャールズ二世は貴族を供に
デューク座へとおもむけば
おりから、ふいの飛び入りは
オレンジ売りの新米と見え
いたいたしげな娘子の
土間で歌った思わぬ美声
全座やんやの喝采の中
キングはデュヴァルを近く召し
これ見よと取り出したのは
コローニュ出自のみごとな指輪
きのう汝が献上したる
黄金にて買い求めたもの
どうじゃ、ナイトの叙爵の前に
もうひと働きしてはくれぬか
これなる指輪をあれなる娘に
な、ぬかるなよ

これはしたり
聞いてデュヴァルの両の瞳に
たちまち燃える瞋恚(しんい)の焔(ほむら)
愛人愛妾数ありながら
まだその上に
おれがとうから目をつけた
あのオレンジ売りに
陛下は手を出すおつもりか

指輪を受け取って
デュヴァルは席を立つ
そのまますたすた劇場を抜け
駆けつけた先は
宮廷付属のミューズ厩舎
おどろく厩(うまや)番に金貨を投げつけ
銀のあぶみの栗毛を引き出し
盗みは人のためならず
わがためにこそ盗むべし
今日ぞ怪盗クロード・デュヴァルの
晴れの門出と鞭打てば
駒も勇んで駆け出(いだ)す
薫風五月の空の下