to top page
2007-10-29
夜の訪問者
木造の長い階段を
誰かが昇ってくる足音
夜が長すぎる!
と別の誰かの叫び声

本棚の影で
自分の腕に針を刺す男
薄明かりの中
注射器にピンクの色が
逆流して
男はふっと息を吐く

と――別の誰かが
ドアを開いて
こんばんわ別の誰かさん

先に言ったのは
どちらの別の誰だったか
もう一人の別の誰かが
相手を差し置いて耳をすませば
遠く近くのアーク灯の下に
ものの寄り添う気配もあって
これからです
夜が枝分かれして
幾筋にも更けて行くのは