to top page
2010-10-17
ゴーレム
曲がりくねった路地
人の背丈ほどの低い家並み
錬金術師小路で姿を消したら
あとはラビの手で
もとの土塊(つちくれ)にもどしてもらうだけ
というのがゴーレム出没の
いわばお約束
まぬけな追跡者どもめ
おれはもう明日の晩まで
どこにもいないんだよ
やっと肩ですり抜けるくらいの幅しかない
路地を、銃眼ににらまれながら
いくら探しまわっても
ゴーレムがみつかるはずはない
見ろよ、月の光さえ白々と
なにもかも嘘だと言ってるだろう
おれもおまえもこの街も
なにもかも嘘
そう、なにもかも
いつだったか突き当たった袋小路も
迷い歩いた地下道も
たった今すれちがったばかりの行商人も
どこかで見かけた辻馬車も
あの街灯の先にある曲がり角も
どれもこれも嘘なのさ
だから、わかったら
さっさと家(うち)へ帰るがいい
ベッドにもぐって
悪い夢でも見るがいい
眠れぬ夜を過ごすがいい
朝までたっぷりうなされるがいい
さておれは、そうだな
泥の夢でも見るとしようか