無いものを補う力

花井さちこの華麗な生涯
監督：女池充
出演：黒田エミ/螢雪次朗/松江哲明/伊藤猛/速水今日子 /水原香菜恵/川瀬陽太/小林節彦/アグサイ・レザ/本多菊次朗/松原正隆/野上正義/久保新二/元井ゆうじ/吉岡睦雄/葉月螢/絹田良美/石川裕一
製作：2004年日本

さちこが井戸からバケツに汲んだ水で顔を洗っている。
どこからともなく男の声。
「だ、誰？」
バケツの底をのぞくと、男がこちらを見ている。
「私はアメリカ第43代大統領」
「だ、大統領？」

それで何故、劇中キャラでブッシュ大統領を登場させようと？

女池：最初は新宿アルタのテレビ画面に某金融会社のCMに出演している犬が映し出されて、さちこにどこへ指示を出すって話だったのに、いつしか大統領になって（笑）。中野さんはスパイものが好きで、スパイものって悪役が必要だったりするじゃないですか。それで、「じゃあ今の悪役って誰だ」となったときに、その頃は丁度アメリカがイラクに爆撃していたときだったので、ブッシュになったんじゃないですかね。

でもこの映画で悪役になったとしても、ブッシュは何とも思わないじゃないですか。それぐらい器のデカイ人の方が、映画の悪役としては良くて。ニューヨークで上映したときは、映画の音声が聞こえなくなるくらい皆笑ってましたよ。

- eo映画｜『花井さちこの華麗な生涯』監督：女池充＆主演：黒田エミインタビュー

太いものをちゃらかす。
日本の歴代首相でやれそうなのは、田中角栄と小泉純一郎くらいか。
ただし、現役で力を持っているときでなければ面白くない。

日常的技術の不在。クルマとか、電話とか。
軍事、国際政治、核兵器、スパイ、ブッシュはいる。
徒歩の世界と国際政治の直結とでもいうか。

無いものを補う。
適当な交通手段がなければテレポーテーションとか使い、通信手段がなければ適当なテレコミュニケーションを考える。
音楽の素養のない者が、サンプリングを活用したみたいに。
仮面でブッシュをフィーチャー。

無いものは無しで済ます。
中年から上の小説家は、ネットやメールを出さない（出せない）ことで特異な世界を作っていたりする。意識的かは不明だが。ネットも電話もクルマもない現代。
小泉純一郎のコメントは無しで済ませた。いや、これは代用の例か。

本編のコメントを小泉総理から貰えないか、監督が自民党に電話で直談判されている予告編も“笑撃的”ですよね。

女池：あれは『花井さちこ〜』にも出演してくれた監督の松江哲明君のアイデアで撮ってくれたんですけど、あれ以来電話かけてないですね。ピンク映画やってると、撮影協力して欲しいって電話しても十中八九、話を聞いてくれないんですよね。だけど聞いてくれたんで、「あ、自民党いいかもしれない」なんて。