女狐
峠道で声をかけられて
あなたは昔の山三(さんざ)さま
え、このおれがですか
山三といえば、ほかでもない
あの名古屋山三郎
いや、まさか、それはない
いくらなんでも
おれが山三のはずはない
いいですか、山三といえば
六十余州の思われ人
誰からも、どこの女子からも
思われずにはいられない
そんな山三で、まさか
いや、おれが、あるはずがない
と身をよじらせて
地べたをくねっていたのだろうな、おれ
見まわせば、いつのまにか
人の目がおれを囲んでいて
どの顔も、ばかだなあとうれしそう
いや、まいった
どういうだまされ方だ、女狐め
あなたは昔の山三(さんざ)さま
え、このおれがですか
山三といえば、ほかでもない
あの名古屋山三郎
いや、まさか、それはない
いくらなんでも
おれが山三のはずはない
いいですか、山三といえば
六十余州の思われ人
誰からも、どこの女子からも
思われずにはいられない
そんな山三で、まさか
いや、おれが、あるはずがない
と身をよじらせて
地べたをくねっていたのだろうな、おれ
見まわせば、いつのまにか
人の目がおれを囲んでいて
どの顔も、ばかだなあとうれしそう
いや、まいった
どういうだまされ方だ、女狐め