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2011-04-02
女狐
峠道で声をかけられて
あなたは昔の山三(さんざ)さま
え、このおれがですか
山三といえば、ほかでもない
あの名古屋山三郎
いや、まさか、それはない
いくらなんでも
おれが山三のはずはない
いいですか、山三といえば
六十余州の思われ人
誰からも、どこの女子からも
思われずにはいられない
そんな山三で、まさか
いや、おれが、あるはずがない
と身をよじらせて
地べたをくねっていたのだろうな、おれ
見まわせば、いつのまにか
人の目がおれを囲んでいて
どの顔も、ばかだなあとうれしそう
いや、まいった
どういうだまされ方だ、女狐め