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2012-03-14
鉄塔のあった町
鉄塔のある町に住んで三十年。
ある朝、その鉄塔が消え、
かわりにヴィーナス像が置かれている。

書けないときはどうするかという問題。
旧作でも、リメイクでも、コピペでも、パクリでも、クズでも、半製品でも、なんでもいいから書いて出す。
それは一つの攻撃的な姿勢だが、難点はサイトがゴミだらけになってしまうこと。
ビジターが最初に見るのが、わたしが一応納得して出したものではなく、確率的にはゴミをまず見る。まずゴミを見た人がサイト内のほかの詩を読んでくれるか。読んではくれない。だからゴミは出すな。

相席の客が言う。
「やはり贋物でしょうか」

人に見てもらうからには、きちんと仕上げて、誰に見られても恥ずかしくない、これが自分の限界です、そう言えるものだけを出す。そういう自制ができなくてはいけない。
けれども、その自制が創作にプラスかというと、「誰に見られても恥ずかしくない」とかいって抑えているうちに意欲がだんだん低下して、書けなくなる、書かなくなる、まあ、いいや、もうこのへんで詩は卒業しようぜ。いつまで子供をやってるんだよ。そういう話になって、それはそれで悪くない結論なのだが。

彼らの手口は次のようなものであった。
贋金はすべてスペインで鋳造され、ジル、モンネ、トルネという三人の前科者によってフランスに持ち込まれた。その上で、フィショ、ミコルネ、アルマネの三人の仲買人の手にわたり、さらに彼らの手から、これを実際に使った青年たちに一個二フラン五十サンチームの割で売りわたされた。
これらの青年たちは、主として浮浪者、中学生、失業した新聞記者、美術家、小説家からなっていたが、中には、美術学校に在学中の学生および官吏の息子それぞれ数名、地方判事の息子一名、大蔵省の属官一名などの相当身分のある者も含まれていた。

鉄塔のあった町を、海沿いに走る列車で離れた。
謎はすでに解けた。
そんな気がして僕は眠り込む。