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2012-11-16
引越履歴
引っ越した先は
いつもビルの最上階
といっても、五階か六階
狭い敷地に建った細長いビルで
部屋も狭い
エレベーターはない
それ以前に
階段がろくにない
踊り場の床が抜けてたり
一階分まるごと階段が落ちてたりで
つながりの悪いところを
外壁にへばりついた非常階段や
梯子でつないであったり
階段も梯子もビルそのものも
いつも風に揺れている

間取りは一部屋か二部屋
K とか D とか L とかの区別はつかない
トイレはあったりなかったり
部屋に藁(わら)が敷いてあったり
動物の糞が乾いて、埃(ほこり)になりかけてたり
そんな環境だから
部屋で食事をすることも寝ることも
ほとんどない
ただただ出たり入ったり
縄梯子や床の抜けた踊り場を
匍(は)ったり伝ったりして昇降するのだから
それだけで時間はかかる
俺の生活って何だったのだ
当然だがそれが
生活の全部と来てる

思い出したが
エレベーターのあるビルに住んだこともある
ぴったりのタイミングで
停止ボタンを押さないと
外に出られない仕組みだったり
ロープが切れて
地下まで落下したこともあって
まだ生きてるのだから
よほど運良く俺は生まれついたか
もうひとつ思い出したが
わりに広いビルの屋上で暮らしたこともある
洗濯物を干しに屋上にあがったとたん
賃貸契約が切れたか何かで
部屋にもどれなくなったのだった
あれからこっち
ずっと屋上暮らしが続いてて
食糧の買い出しに行くくらいしか
地上に降りることもない