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2013-01-19
DOT言語で読む風太郎忍法帖 [2] 忍法破倭兵状
「忍法破倭兵状」は朝鮮の呪術師と日本の忍者が手を組んで秀吉を殺そうとする話。
朝鮮水軍統制使・李舜臣(り・しゅんしん)の戦闘報告書「破倭兵状(はわへいじょう)」からタイトルが取られている。
登場人物が少ないのでグラフ化するのは容易かと思ったが、そうでもなかった。

人物相関図。


この物語は主人公が誰なのかわかりにくい。
はじめに李舜臣の人物像と事績が朝鮮側の史料を引いて語られる。全体の中で占めるボリュームはこの部分が圧倒的に大きい。だが李舜臣は物語の進行にかかわることなく、この部分だけで姿を消す。
当初主役かと見えたのは、秀吉に個人的な恨みをいだく日本の忍者・狐法馬だが、すぐに李舜臣の弟・李竜将に取って代わられる。
その竜将も自分で行動することはまれで、じっさいに何かを行うのは竜将の妻で巫女の鸚鵡(おうむ)である。鸚鵡は日月明図(イルオルミョンド)という鏡を使って相手を術にかける。
鸚鵡と日月明図を軸にすれば人間関係は次のようになる。



最初の図は人物の関係が交錯していてわかりにくいし、二番目のでは簡潔すぎる。
最初の図から副次的な人物と関係を取り除いて整理するのがいいだろう。また朝鮮での出来事は外し、日本での最終局面だけグラフ化する。
李舜臣は物語の進行にかかわらないので外す。服部半蔵もこの物語では端役なので外す。
ほかにも比較的薄い人間関係を省略すると次の図ができる。



局面をしぼったことで、かえって全体の構図が見えた。
「忍法破倭兵状」とは、沙也可の首というアイテムを携えた李竜将と日月明図というアイテムを駆使する鸚鵡の物語である。夫婦物 RPG とでもいうか。彼らは使命を果たすが、朝鮮へは帰れない。