to top page
2014-01-23
妹をサーカスに売って学資にした
妹をサーカスに売ったことは前に書いた。
- 電子本『懲罰篇』

少し嘘がある。一家の生活のためだと書いたが、実際はぼくの学資にあてた。
そのカネでぼくは大学に進み、物理や工学を学んだ。卒業研究は、雷の光と音を人工的に作り出し、人間の目や耳に届くまでの変化をシミュレートするものだった。卒論は大学サイトに実名で公開されている。
行きがかりで(なかば強制的でもあったのだが)、修士、博士コースも修めた。だからぼくの肩書きは工学博士です。
そのころぼくはもちろん十代から二十代をまたぐ時期で、同じころ池袋にいたぼくはおそらく三十代。すべては散歩の途中であの女に会ったことからはじまった。