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2014-10-23
耳の長い黄色い兎 v5
耳が長い。
兎だからか。
それとも、その兎だからか。
色は黄色い。

一瞬意識が途切れかかった。
危ないなと思った。
自分が何者で、どこで何をしてるところか、
そんなことが判らなくなった。
耳は聞こえなかったが、
目は見えていたようで、
まわりの景色がなんとなく残ってる。

そんなことが実際にあったのか、
そんなこととは、どんなことなのか、
家を出る前だったか、
どこかに向かう途中だったか、
帰り道でだったか、
いつ意識が途切れかかったのかも思い出せない。

耳が長い。
兎だからか。
それとも、その兎だからか。
兎だって耳の短いのはいるだろう。
だから、耳が長いのはその兎だからだ。
色は黄色い。

だんだん思い出してきた。
道に迷ったのだった。
原っぱだった。
いつのまにか兎が増えて、
耳の長い黄色い兎たちが踊り跳ねていた。
夢に違いない。
だったら、どうしてくれようか。
どうしてくれよう――とは思ったのだ。
だが、何をどうしようとしたのだったか。
兎の群をどうしようと思ったのか、
それとも、夢そのものをなんとかしたかったのか。
何か思いながら家に帰る道を探した。

記憶のすきまに、
今は黄色い兎が一匹だけはさまってる。
栞みたいに。