ひとはひと
脱走兵とスリの会話。
「ぼくのことを聞きましたか」
「聞いたよ」
「ぼくは軍隊から脱走した」
「それも聞いた」
「卑怯だと思いませんか」
「思うさ。お国のために召集されたら、みんな戦地へいくのが当たり前だ。逃げるなんて卑怯にきまってる。だが、おまえさんは卑怯でもおれは卑怯じゃない。それでいいのさ。ひとのことは知っちゃいない」
結城昌治『仕立屋銀次隠し台帳』から。
「ぼくのことを聞きましたか」
「聞いたよ」
「ぼくは軍隊から脱走した」
「それも聞いた」
「卑怯だと思いませんか」
「思うさ。お国のために召集されたら、みんな戦地へいくのが当たり前だ。逃げるなんて卑怯にきまってる。だが、おまえさんは卑怯でもおれは卑怯じゃない。それでいいのさ。ひとのことは知っちゃいない」
結城昌治『仕立屋銀次隠し台帳』から。