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2015-02-09
ひとはひと
脱走兵とスリの会話。

「ぼくのことを聞きましたか」
「聞いたよ」
「ぼくは軍隊から脱走した」
「それも聞いた」
「卑怯だと思いませんか」
「思うさ。お国のために召集されたら、みんな戦地へいくのが当たり前だ。逃げるなんて卑怯にきまってる。だが、おまえさんは卑怯でもおれは卑怯じゃない。それでいいのさ。ひとのことは知っちゃいない」

結城昌治『仕立屋銀次隠し台帳』から。