お仲間ですか
- 遭遇
「お仲間ですか」
とお嬢さんが言った
華族の屋敷に住み込んで
おれはお嬢さん付きの運転手
「お仲間ですか」
とお嬢さんがまた言った
今夜のさっきは舞踏会の帰り道
お屋敷近い雑木の林で
人でもなければ
そうかといって動物でもない
妙な風体の連中に車を囲まれて
その時だった
お嬢さんが「お仲間?」と言ったのは
不思議な表情だった
彼らを見ておもしろがっているような
でも、怒ってもいるような
そういえば、人でもなく動物でもなさそうな
あの連中の表情も
お嬢さんに似てた
どれくらいの時間が過ぎたか
ふいに彼らは
闇に溶けこむように消えて
出来事はそれでおしまい
もし、おれがお仲間だったら
お嬢さんはどうするつもりだったのか