海賊
上田秋成「海賊」のあらすじ。
けれども、論も説も史もじつはすべてフィクションである。
「海賊」の後書き。
『春雨物語』全体の前書き。
「ふみ」とあるのは正史の意。
- 任地の土佐から都にかえる紀貫之の船に海賊が単身乗り込んでくる。「自分の質問に答えろ」と海賊は貫之に文学論争を挑むが、一方的に自説を述べ終えると小舟に飛び移って去る。
- 都にもどった貫之の家に手紙が投げ込まれる。菅原道真について書いてあり、筆づかいは荒々しいが理路はととのっている。
- 手紙の追記。おまえの名前は「つらゆき」ではなく「つらぬき」と読むべきものである。知らぬのは、歌はよんでも文(漢籍)を読まないからだ、しばらく歌をやめて文を読め、惜しい男よ。
- 貫之が友人にきいたところでは、海賊の正体は文室秋津であろうという。学識は広いが放蕩乱行のため追放され今は海賊となって暴れまわっている、と。
けれども、論も説も史もじつはすべてフィクションである。
「海賊」の後書き。
これはわれ欺かれてまた人をあざむくなり。筆、人を刺す。また人にささるれども相ともに血を見ず。
『春雨物語』全体の前書き。
むかしこのころの事ども人に欺かれしを、我またいつわりとしらで人をあざむく。よしやよし、寓(そら)ごとかたりつづけてふみとおしいただかする人もあればとて、物いひつづくれば、なほ春さめはふるふる。
「ふみ」とあるのは正史の意。