ただし、満月の夜に限る
狼少年が狼男になった。
少年だった昔、「狼が出た」と叫んで知らせても狼は現れず、そんなことが二度、三度かさなって、嘘つき少年ということにされてしまった。
だけど嘘をつくつもりはなかった。狼が出なかっただけなのだ。狼さえ出てくれれば、嘘つきなんて呼ばれずに済んだのに。狼さえ出てくれれば。狼さえ出て…。なんとか狼に現れてもらいたい。なんとか狼に…。
思いはかなって、狼少年は狼男となった。
今では少年が──いや、おとなになった狼男が──「狼が出た」と叫べば、かならず狼は現れる。
なにしろ、狼男自身が叫ぶのだから。
ただし、いまのところ出現は満月の夜に限る。
少年だった昔、「狼が出た」と叫んで知らせても狼は現れず、そんなことが二度、三度かさなって、嘘つき少年ということにされてしまった。
だけど嘘をつくつもりはなかった。狼が出なかっただけなのだ。狼さえ出てくれれば、嘘つきなんて呼ばれずに済んだのに。狼さえ出てくれれば。狼さえ出て…。なんとか狼に現れてもらいたい。なんとか狼に…。
思いはかなって、狼少年は狼男となった。
今では少年が──いや、おとなになった狼男が──「狼が出た」と叫べば、かならず狼は現れる。
なにしろ、狼男自身が叫ぶのだから。
ただし、いまのところ出現は満月の夜に限る。