to top page
2015-12-20
ジキルとハイド
ジキル博士の乗った乳母車をハイド氏が押している。
二人とも幼い。
ハイド氏の背丈だと、やっと乳母車の把手に手がとどく。背伸びするようにして、けなげに車を押している。乳母車の中でジキル博士が立ち上がり、小さな手でハイド氏の頭をたたく。しっかり押せと言ってるのだろう。
「なるほど」と思った。
子供のころのジキルとハイドは別人物だったのだ。それが成長するにつれて癒着し、二重人格のおとなになった。そういうことではないか。
いや、違うか。もともと二重人格だったのだが、子供のころはもっとうまく人格を分離できて、別人のように見せることができたのではないか。何も考えずに生きられる幼い者の強み。
「子供は無邪気だからな」と思う。
ハイド氏がこちらを見て笑う。
「無邪気であるものか。邪悪なのさ」