to top page
2016-01-03
F氏近況
銀座で Fantomas 氏と出会う。以下、F氏。
黒い上下と黒い帽子、それに黒いアイマスク。そんな目立つ格好でいいのかと思うが、なにか考えがあるのだろう。
「おれのことを書いたな。なんで隠してた」とF氏が言う。
「隠してませんよ」と自分。
「隠した」
「隠してない」
F氏は昔の泥棒なのでネットは見ない。それで、ネットで何かを書くということは、隠れて書いたことになるらしい。それもそうかという気もして、一方的に非難されて終わる。
「結局Fさんに伝わったんだから、隠したことにならない」
そう言ってやればよかったと思うが、後知恵。

二日つづけてF氏に会う。また銀座。F氏の衣装も昨日と同じ。
「ネットの記事をどうして知ったの?」と、今度はこちらからたずねる。
「手下に聞いた」
「手下って、Fさんの手下ならけっこう年食ってると思うけど、ネットなんか見るの?」
「あんた、あいかわらず抜けてるな。セキュリティ破るのに若い連中を使ってるんだよ」
ああ、それでネットのこともわかるのか。F氏がこのごろ銀座を主な仕事場にしてるのは、宝飾店やブランド店が増えているから。それなら警備網を破るのにIT技術は要る。
「わかった、わかった、さすがだね」と自分。「じゃあ、もう一つ気になってるんだけど、その服装はなんなの? その黒ずくめ、目立ちすぎじゃない?」
「アリバイ工作さ。そんなこともわからないのか」
盗みの現場ではF氏自身が指揮を取る。その間、同じ服装のダミーを仕立てて、渋谷とか池袋とか、銀座から離れたところを歩かせておくのだという。
「そんなんでアリバイ工作になるのか」
「なるさ。Keep it simple, stupid」とF氏。「アメ公の警句だがね、簡単にやれ、馬鹿野郎」

以上のことをネットで書いたところ、F氏からメール。
「手口をばらしたな。どうするか見てろ」
文面は脅しめいているが、また新しい手口を考えるから、楽しみに見ていろという意味らしい。