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2016-03-04
ウワバミ
春めいてきたからそろそろウワバミが出るころと思っていると、その時はすでに獲物を物色してるのがウワバミだから油断できない。
ウワバミは固い頭が好き。
木の枝にからまって、石頭なやつが下を通りかかるのを待つ。
そいつが真下に差しかかるのを狙い定めて襲いかかり、いっきに頭蓋を噛み割る。
ウワバミも幼いうちは柔らかい頭を狙う。けれども歯ごたえが物足りなくて、しだいに固い頭を狙うようになる。それがウワバミの成長。

噛みつくときはターゲットの真上やや後方から襲え。
ガバッと口をおもいきり開けて、上の前歯がぴったりターゲットの両眼に当たるように噛みつけば、頭蓋をらくに破壊して頭部の上半分だけ噛みちぎれる。
あとは歯と舌で骨をより分けて、脳みそだけ胃に流し込め。その脳みそがお前の成長の糧。
残った骨は「ぺっ」と吐き出して終われ。

そんなことを言ってるうちにも春は深まって、ここは入試がらみの諸事もすっかり片付き閑散とした春休みの大学キャンパス。生物学教室の教授が意欲的かつ従順な学生を引率して近くの自然公園に出かけるところ。
公園に行く名目は研究サンプルの採集だが、
「このうち何人が無事もどってこられるか」
それが楽しみで笑いを噛み殺す教授。ウワバミの襲撃を何度もしのいできた固い頭の持ち主。
ウワバミたちよ、教授はウワバミを見くびっている。
お前がウワバミなら、まず教授を狙え。残りはそのあと。