風の港
飢えた姉弟が
倉庫の陰でひそひそ
港はいつも
最悪の港だから
風の吹かぬ日の港など
どこにあるものか
波の荒れぬ日の港など
どこにあるものか
港はいつも
最悪の港だから
一人の密航者も
溺れ死んだことのない港など
どこにあるものか
風にきしむドアを
開け放ったまま
ベッドの上で
手首を切る女のいない港など
どこにあるものか
荷役と酒の日々に疲れて
港を逃げ出す男がいたとすれば
それはむしろ
幸運というもの
眇(すがめ)の少年と
首筋に垢(あか)をためた少女の
哄笑に送られて
倉庫の陰でひそひそ
港はいつも
最悪の港だから
風の吹かぬ日の港など
どこにあるものか
波の荒れぬ日の港など
どこにあるものか
港はいつも
最悪の港だから
一人の密航者も
溺れ死んだことのない港など
どこにあるものか
風にきしむドアを
開け放ったまま
ベッドの上で
手首を切る女のいない港など
どこにあるものか
荷役と酒の日々に疲れて
港を逃げ出す男がいたとすれば
それはむしろ
幸運というもの
眇(すがめ)の少年と
首筋に垢(あか)をためた少女の
哄笑に送られて