夜更け
どこにもあるここにもある
いつも通りの有楽街に
歳末のアーク灯が
今夜も燃えていて
どれかのビルの
長い夜更けの階段を
誰かが忍び歩きまわる頃
夜が足りない!
と別の誰かが叫びだす
本棚の影で
自分の腕に針を刺す男
薄明かりの中
注射器にピンクの色が
逆流して
男はふっと息を吐く
足りてるのさ、夜は
と――別の誰かが
ドアを開いて
こんばんわ別の誰かさん
先に言ったのは
どちらの別の誰だったのか
もう一人の別の誰かが
相手を差しおいて耳をすませば
遠く近くのアーク灯の下に
ものの寄り添う気配もあって
これからだ
夜が枝分かれして
幾筋にも更けて行くのは
いつも通りの有楽街に
歳末のアーク灯が
今夜も燃えていて
どれかのビルの
長い夜更けの階段を
誰かが忍び歩きまわる頃
夜が足りない!
と別の誰かが叫びだす
本棚の影で
自分の腕に針を刺す男
薄明かりの中
注射器にピンクの色が
逆流して
男はふっと息を吐く
足りてるのさ、夜は
と――別の誰かが
ドアを開いて
こんばんわ別の誰かさん
先に言ったのは
どちらの別の誰だったのか
もう一人の別の誰かが
相手を差しおいて耳をすませば
遠く近くのアーク灯の下に
ものの寄り添う気配もあって
これからだ
夜が枝分かれして
幾筋にも更けて行くのは