ラ・メトリーの死
- 付録部 blog-bu : 【話題】首がないまま生き続けた鶏「首なし鶏マイク」伝説
夕食用に斧で首を切られたのに18カ月も生き延びた鶏がいたという。
この記事で思い出したのだが、ラ・メトリーの『人間機械論』にこんな一節がある(杉捷夫訳)。
酔っ払った兵士が一刀の下に七面鳥の首を切り捨てた。するとその七面鳥はじっと立っていたが、それから歩き出し、走りだした。壁にぶつかると、くるりと後を向き、羽ばたきをし、さらに走りつづけたが、最後に倒れた。地に倒れても、その七面鳥の筋肉はなおびくついていた。これは余の親しく目撃したところである。
ジュリアン・オフレ・ド・ラ・メトリー(Julien Offray de La Mettrie)は、18世紀前半の哲学者、医師、啓蒙期フランスの代表的な唯物論者。
彼のとなえた機械論では、人間や動物はゼンマイの集合にすぎない。それぞれのゼンマイはたがいに影響しあっているが、勝手に独立しても動いている。脳は重要なゼンマイではあるが、だからといってすべてを支配しているわけではない。それゆえ、頭を切られても七面鳥は走ったのであり、壁にぶつかると向きを変えたのである。
また、精神や霊魂といったものがゼンマイと別に存在しているのではない。ゼンマイの集合が精神なのである。肉体と別に魂というものがあるなんて、いつまでそんなことを言ってるのだ、おまえら。『人間機械論』はそんな感じの本。
ラ・メトリーは霊魂の存在を否定したことや医界の腐敗を攻撃したことで身辺が危うくなり、プロイセンに逃れてフリードリヒ2世の宮廷に入ったが、ある宴席で雉子肉と松露のパテを食べていて苦しみだし、自分で瀉血や温浴などの治療をこころみたが効なく、苦しむこと数日で死んだ。
直接の死因は腸捻転か腸閉塞だろうという。ゼンマイ=腸の故障ないし反乱による死。みずから機械論を実践してみせたようで、つい笑ってしまうのだが。
この肖像は Wikipedia から。
哲学者というより、親戚に一人ぐらいはいそうな皮肉屋の叔父さん。
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