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2014-10-01
北関東の病院で
北関東の病院にいる。
このあたりでは、昼間はラジオの電波が弱い。
日が暮れるころから音が明瞭になる。
といっても、マニアみたいに音質にこだわるわけではない。
イヤフォンもヘッドフォンも使わない。ラジオはラジオのスピーカーで聞くのがいい。
夕食が終わるとラジオのスイッチを入れる。
はじめに水戸のラジオ局の放送を聞く。
水戸と当地のあいだに筑波山があるが、電波は問題なく届く。
水戸のラジオが終わると、少し西の宇都宮のラジオを聞く。
さらに宇都宮が終わると佐野からの放送を聞く。
時差の関係でそんなことができる。東の局の放送が終わっても、その西方では放送が続いている。
佐野から桐生、さらに前橋あたりまで聞くと、当地は午前3時。だいたいその頃でスイッチを切って眠りにつく。
眠れないときは、長野県内の局を探す。
山の上にでも放送塔があるのだろうか。
軽井沢、小諸あたりの電波が入ってくることがある。

雪の夜道を小型バスがやってきて、放送局の前に止まる。
ここからは想像である。
それぞれの楽器をかかえた音楽家が、バスからおりて放送局の建物に入ってゆく。
その日最後の番組に伴奏や効果音を提供する音楽家たちである。
「二人目ができたって?」とギターケースの男がきく。
「うん」とだけ答えたのはキーボード奏者か。
地方都市にいて音楽だけで食べてゆくのは難しい。
ほかに仕事を持って音楽を続けているセミプロ、あるいはアマチュアのアルバイトあろう。
でも放送局のおかげでささやかな収入を得てるらしい。
長野方面からの放送を聞くときに限ってそんなイメージや考えが浮かぶ。