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2016-11-10
再会
のちに「ねずみ小僧」と呼ばれることになる男とその妻、ふたごの赤ん坊。
食うや食わずの長屋暮らし。男は駆け出しの泥棒で、ほとんど稼ぎがない。
妻が日本橋の実家(豊かな商家)からカネを盗んでくる。
「親がかわいそう。あの人たちは知ってて見逃してくれてる」
「だったら、知られないように盗んでこい」
それでは親をだますことになるという妻の複雑な気持ち。
夫の提案で、ふたご(どちらも女の子)のうち一人を実家に置いてくることにする。
かわいい赤ん坊をあげる代わりに、ときどきカネをもらって(黙ってだが)くる。それなら取り引きみたいなもので、盗みにはなるまい。

それから長い年月が流れる。
銀座通りで二人の若い女が出会う。
「あんたは」
「姉さん」
抱きあってよろこぶ二人。
彼女たちはかつてのふたごの子孫だが、元のふたごの気分になっている。
聞きかじりの知識で日本橋や銀座の変遷を語りあう。
「あのさ、女ねずみ小僧って、ほんとにいたらしいよ」
「やっぱりあたしたちの親類かね」