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2017-01-15
相合傘メモ
「今やもう扇子ではなく、傘である、まったく国民衛兵的国王の時代にふさわしい発明だ。恋の戯れに好都合な傘! 目につかない物陰がわりの傘。ロビンソンの島の覆いであり、屋根である」
という一節が1910年にパリで出版された本にあるという。ヴァルター・ベンヤミン『パサージュ論』第1巻(今村仁司・三島憲一ほか訳)より。
男女が人目に隠れていちゃつく小道具として、それまでの扇子から傘が取って代わったということらしい。ほぼ日本でいう相合傘にあたるのではないか。
訳注によれば国民衛兵的国王とはルイ=フィリップ。在位1830-1848。

で、日本の例を探してみた。

石川豊信の浮世絵。原題不明だが、英文によれば「恋人役の佐野川市松と瀬川菊次郎」。1752年(宝暦2年)の作というから、上に引いたパリの例(ルイ=フィリップ時代)より80〜90年前。
- Honolulu Museum of Art » Sanogawa Ichimatsu and Segawa Kikujirö as Lovers


鈴木春信「雪中相合傘」、明和4年(1767)頃。
- Suzuki Harunobu - Wikipedia


これも鈴木春信。「達磨と相合傘」というタイトルだが、著者(野口米次郎)の付けたものだろう。
- 国立国会図書館デジタルコレクション - 春信


相合傘に関する考証的文章が国会図書館のデジタルアーカイブに。
- 国立国会図書館デジタルコレクション - 貞操帯秘聞 : 民俗随筆

日本の相合傘の絵では、たいがい男が女の右側にいるという発見がおもしろい。画像検索でもそういう傾向だが、これを男尊女卑の現れとするのは即断ではないか。といっても、別の答を持ってるわけではないが。