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2018-05-11
いしいひさいち『現代思想の遭難者たち』
いしいひさいちの『現代思想の遭難者たち』は、裏表紙のキャッチコピーに、

いしいワールドに分け入った〈現代思想の冒険者たち〉の変わり果てた姿がここに! フーコーもデリダも、マルクスもフロイトも! エッセンスを掴み取る鬼才の直感力に、連載中から話題沸騰、毀誉褒貶、手塚治虫文化賞短編賞も受賞。これは現代思想の“脱構築”か、それとも哲学への冒涜か? 思想家のプロフィールと勘所をまじめにおさえた注も完備。

とある、その口上どおりの本。

表紙イラストで壊れかけたいかだに乗っているのは、マストのてっぺんのジル・ドゥルーズ、左端で筏にすがりついているフーコー、バルト、その眼前で寝転がってるデリダ、マストの根方で見つめあうハンナ・アレントと愛人のハイデガー、そのほかルカーチ、エーコ、メルロ=ポンティ、ガダマー、バシュラール、ラカン、アルチュセール、バフチン、クリステヴァ、バタイユ、ユング、ウィトゲンシュタイン、レヴィ=ストロース、ハーバーマス、レヴィナス、クワイン、ホワイトヘッド、ベンヤミン、ロールズ、ポパー、クーン、右端の樽の中にいるのがカフカ。筏の手前で溺れかけている4人は、ニーチェ、フロイト、マルクス、フッサール。
これだけの人数を苦もなく描き分け、本文ではそれぞれの人物について思想模写──もちろん漫画でだが──をやっている。やはり天才としか、いしいひさいち。


いしいひさいち『現代思想の遭難者たち』(講談社学術文庫)