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2018-07-03
海水浴場の着替え小屋
海水浴場の着替え小屋、英語では beach hut。
beach cabin、bathing box とも。


beach hut はヴィクトリア朝のイギリスで生まれて、オーストラリア、フランス、イタリアなどに拡がったという。
着替え小屋は漁師の小屋を転用したのがはじまりというが、beach hut に先立って使われていた移動式の bathing machine が固定式に変わったものという誕生経路も指摘されている。

bathing machine については前に言った。

beach hut に対応する日本の施設は、いわゆる「海の家」。
たぶん日本には、個別の着替え小屋はなかった。
その傍証は、岩谷時子のつぎの歌詞。

1960年の世界的ヒット曲 Itsy Bitsy Teenie Weenie Yellow Polka-Dot Bikini の邦題は「ビキニスタイルのお嬢さん」。複数の訳詞があるが、最もヒットしたのは岩谷時子が訳して坂本九が歌った版か。その岩谷訳では、

She was afraid to come out of the locker

という冒頭の歌詞が、

海辺のせまい小屋から
あの娘は出られない

と補われ、オリジナルの「ロッカー」が訳文では「海辺のせまい小屋」と具体的になっている。
欧米圏の聴き手なら locker の一語で通じても、日本では通じないと見て補ったのであろう。つまり beach hut 的なものが日本にはなかったことの傍証とする所以。
それにしても、うまく訳すものだ。