to top page
2018-09-27
テネシーのジャーナリズム ver.2
そのころあった新聞の紙名
「朝の怒号」
「毎日万歳新聞」
「霹靂と自由の戦いの雄叫び」
「朝の誉れ、ジョンソン郡の雄叫び」
「おいぼれ兵」
「雪崩」
「地震」
「道徳火山」
「へなちょこ野郎」

僕は「朝の誉れ、ジョンソン郡の雄叫び」紙の社外論説委員に採用され、
さっそく社説を書くよう命じられた。
僕の書き終えた社説を直しはじめる主筆。
主筆を狙って窓から打ち込まれた弾丸がそれて僕の片耳を削る。
撃ってきたのは「道徳火山」のスミス。
主筆が撃ち返す。
スミスの第二弾で僕の指が吹き飛ぶ。
そこにストーブパイプから手榴弾が落ちてきて、破片で僕の歯が二本抜け飛ぶ。
「いいか、社説というのはこう書かなくてはいかん」
返された社説は修正の跡で真っ黒。
よくもここまで他人の原稿を切り刻めるものだと呆れているところに、
今度は窓から煉瓦が投げ込まれ、
「大佐だな」
と発砲する主筆。そして撃ち合い。
空になった弾倉を詰めなおして、さらに撃ちあう大佐と主筆。
葬儀屋に向けて退去する大佐。

「三時にジョーンズが来る。来たら生皮で叩いてしまえ。
それより先にギレスピーがたずねて来る。来たら窓からほうり出せ。
ファガソンは四時ごろだろう。来たら殺っちまいな」
言い置いて主筆が外出すると、
ギレスピーが来て僕を窓からほうり出す、
ジョーンズがやって来て生皮でさんざん僕を打ちのめす。
予定になかったやつにも殴られ、さらに襲来する怒り狂った暴徒の群、詐欺師、政治家、記者、ヤクザ。
こんな仕事はやめたい。
そう思ったところに、取り巻きをつれた主筆が現れ、たちまち起こる阿鼻叫喚。
射殺される者、
串刺しにされる者、
四肢を切断される者、
爆発で吹っ飛ばされる者、
窓からほうり出される者。
騒ぎがおさまって主筆が僕に言う、
「君だって、慣れれば、きっとこの土地が好きになるさ」

「テネシーのジャーナリズム」はマーク・トウェインの短編(『バック・ファンショーの葬式』所収)。
以上は、そのあらすじ。

語り手の僕は、南部の気候が健康によいとの医者のすすめでテネシーにやってきたのだが、
「テネシーのジャーナリズムはわくわくしすぎて、僕には向かない」
そう判断して、初出勤のこの日で南部に別れを告げる。