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2019-04-30
星の王子の場合
空と陸を分ける地平線は、その天体の輪郭を示す線でもある。
このことは、小型の天体を経巡ってきた『星の王子さま』の王子なら、いうまでもなく承知している。

たとえば次図の小さな星では、王子の視線の途中、ちょうど火山が煙を噴き上げているあたりに地平線がある。
幾何学ふうにいえば、王子の視線と星の球面が接するあたりが地平線。


上の図で王子が見ている地平線は、われわれが地球上で見ている地平線とはだいぶ様子が違う。
われわれの地平線は、視線の彼方でほぼ直線状に横たわっているが、小さな天体の地平線は円周状に湾曲していて、この円周は観察者(王子)が首をめぐらすと円として完結する。
地球上のわれわれも、首をまわして四方をながめれば、地平線が円周状であることに気づかないとは限らない。が、直感的に気づくのはかなり難しく、眼に映ったものに思弁を重ねあわせてはじめて地平線が円周状である可能性に思い至る。
言い換えると、われわれは学習や思弁によって地平線が円周状であることを知るが、小さな星々を経巡ってきた星の王子は、そのことを経験で知っている。

ついでだが、以上で地平線と言ったものを、天文学では実視地平線(true horizon)という。
天文学でたんに地平線(horizon)と言ったときは、観察者の視線を水平方向に伸ばした先にあるものを指す。
次の図で見るとおり、水平方向の視線の先に陸と空の境界はない。
かわりにこの視線は天球に突き当たる。
天球とは、宇宙を球形と見るモデル。すべての天体はこの球形の内部にあるとし、地球がその中心にあるとする。
天球を上半分と下半分に分ける線を、天文学では地平線という。