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2017-01-21
相合傘図における男女の位置関係
浮世絵などの相合傘図では、男が女の右側にいることが多いという説。
古来我国の絵画に現はれた相合傘の絵は、殆んど云ひ合はせたやうに向つて女が右、男が左──勿論、此反対のものも沢山あるけれど──に描かれて居る。これは我国に於ける男尊女卑の習慣──常に男は女の右方に位する──が期せずして其時代々々の画家の彩管に反映した証拠ではあるまいか。
- 国立国会図書館デジタルコレクション - 貞操帯秘聞 : 民俗随筆

Google の画像検索で「相合傘 浮世絵」を検索すると、次の11点が拾えた。ほかにも相合傘を描いたものがあるが、それらは男同士、女同士、母子、主従の関係なので除く。

11点のうち、男が女の右側にいるのは次の8点。


逆に、女が男の右側にいるのは次の3点。ただし、真ん中の図は、男女関係というより主従関係かもしれない。


画像検索で調べた限りでは、8対3または8対2で男が女の右側にいる。はじめに引いた『貞操帯秘聞』の指摘は当たっているのではないか。

引用文後半の「男尊女卑」説については保留。
よく言われるように、歌舞伎や人形浄瑠璃の外題では、お染・久松、お初・徳兵衛、夕霧・伊左衛門のように、女性名→男性名の順に記される。女性を大切なものとし、尊ぶ気持の現れと見ることもできる。

この二つは、歌川国芳「荷宝蔵壁のむだ書」に書き込まれた相合傘の落書き。
右から左へという日本語縦書きの原則に従えば、どちらも女性名→男性名の順で書かれたと見なせる。人名を列挙する場合、ふつうは上位の者の名から書くから、このケースでは女(お染、お仲)が男(久松、清七)より尊ばれている。
で、女を男の上に置くと何が起こるか。男が女の右側に立つことになる! 相合傘の下の二人を、文字の代わりに絵で示せば、このことはもっと飲み込みやすいだろう。
二つの例だけ(それも同じ国芳の絵)からの推論だから、これを結論とするわけにはいかないが、「男が女の右側にいるのは、女のほうが尊いから」との説も成り立ちうるから、上の「男尊女卑」説については賛否を保留する。

浮世絵の相合傘図は歌舞伎を材料にしたものが多い。
歌舞伎の舞台では、身分の上の者が上手(客席から見て右側)にすまうから、その意識的・無意識的影響があるかもしれない。

向かって右側が上位者である例。ひな壇の場合。
右大臣、左大臣の名称は、内裏からみた方向を表していて、実際には向かって右側が左大臣、左側が右大臣。
- 雛壇での、左大臣、右大臣の位置関係が知りたい。右、左どちらにおくか。向かって、なのか。 | レファレンス協同データベース