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2019-05-09
まつろわぬ者の追放先としての星界
ユダヤの経典に、主神にさからった神々の条があるという。
彼らは業火に焼かれて星になったのだ、と。

エノーク(Enoch)は、多くの星が地獄(Gehennas)の火に焼き尽くされたさまを叙している。それはエロヒームの神がこれらの星に光れと命じたときに光り始めなかったからである。このように星辰は『不逞の天使』すなわち、主上の神から排斥された神々であったのである。 ――アーレニウス著、寺田寅彦訳『宇宙の始まり』(青空文庫

古代オリエントやギリシャの天文観について読んでいるところだが、この「不逞の天使」説はむしろ日本の星伝説を思わせる。

星や月を神格化した神は世界各地に見られ、特に星神は主祭神とされていることもある。 しかし、日本神話においては星神は服従させるべき神、すなわち「まつろわぬ神」として描かれている。これについては、星神を信仰していた部族があり、それが大和王権になかなか服従しなかったことを表しているとする説がある。
全国の星神社や星宮神社の多くは天津甕星を祭神としている。 ――天津甕星 - Wikipedia

天津甕星あまつみかぼしは金星のことという。
ならば、星界で最も明るく光る星が反逆者と同一視されたことになる。
甕星みかぼしの別名は天香香背男あまのかがせお。「香香」とは輝くの意。

天孫降臨に先立って、天孫側は二柱の神を葦原中国あしはらのなかつくにに派遣する。
「蛍火光神、蝿声邪神多くあり、また草木みな言語をよくす」とされたその地で、派遣軍の二神は邪神たちを誅し、草木、岩石までことごとくをたいらげて引き上げるが、甕星を討つことはできず、第二次派遣軍によってようやく帰伏せしめたと『日本書紀』。
また『書紀』に引く別伝では、はじめの討伐軍派遣にあたって、「まず甕星から討つ」との策が出されていたという。
これらをあわせれば、天津甕星は葦原中国の征服にさからった最強で、かつ最後まで抵抗した敵。

日本には平将門と北極星のかかわりもあり、星の世界で最も強く輝く星(金星)と天球の中心に位置する星(北極星)が、ともに反逆者と結び付けられている。