直感は間違える
「ウィトゲンシュタインは哲学がどういうものかを説明するためになぞを出したことがある。地球の赤道をピッタリとロープで巻いたとする。もし、そのロープを1ヤードだけ長くして、そのロープと地球との間を等距離にして張りつめたとすれば、地球とロープの間はどれくらい離れるだろうか。その場にいた者はだれも、ちゃんと計算することをしないで、地球とロープの間がほとんど離れないので、変化はみとめられないだろうという考えに傾いた。しかし、それは間違いなのだ。実際には約6インチの隙間ができる。ウィトゲンシュタインはこういう種類の間違いが、哲学でもおこる間違いだとみんなに話した。つまり、イメージによって誤信におちいる誤りである。このなぞでは、われわれを誤りにみちびくイメージは、ロープ全体の長さと、つぎたした部分の長さの比較という点だ。イメージそのものは少しも間違っていない。ただ、1ヤードの部分がロープの全長に比べると、何万分の1にもあたらないだけだ。けれども、そのことから間違った結論に達することになる」 Norman Malcolm: Ludwig Wittgenstein, A Memoir (板坂元訳)
via Bushdog's Tumblr
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不慣れな単位系は避けてメートル法で検算した。
赤道の長さを 4万km とし、ロープを 1m 長くしたとして、π = 3.14 で計算すると、地球とロープの間に 16cm ほどの隙間ができることになり、ヤード法によるウィトゲンシュタインのエピソードとほぼ一致。
タイトルを補足しておくと、直感だけが間違えるのではない。頭を使っても間違える、しばしば直感以上に。
新しい記事タグが必要か、「直感と論理」など。
とりあえず、関連がないわけではないので「天球」タグで。