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2019-09-05
「彼らが相互に持つ軽蔑」というのだが
土地所有者は資本家を、傲慢な解放された富裕になった昨日までの自分の奴隷として知っており、自分自身を、彼らによっておびやかされている資本家だとみなしている。

資本家は土地所有者を、怠惰な冷酷で利己的な昨日までの主人として知っている。

彼らが相互に持つ軽蔑についてはっきりした映像を手にいれるためには、ただ動産にたいする不動産の、およびその逆の攻撃を読みとりさえすればよい。

土地所有者は彼の財産の貴族的世襲を、封建的な記念品や名残を、追憶の詩歌を、彼の夢想的な気質を、彼の政治的重要性、等々を、主張する。同時に彼は、その反対者をこう描きだす。すなわち狡猾な金銭ずくの難くせをつけたがる詐欺師のような貪欲な買収されやすい反抗的な人情も才知もない者、また、共同体からのけものにされて勝手気ままにそれを売買する高利をむさぼる淫事をとりもつ卑屈な如才のないご機嫌とりのごまかしをやる無趣味な窮民や犯罪者などすべての社会的紐帯の解体をもたらし育て増長させる名誉もなく主義もなく詩情もなく何もない金持ち無頼漢であると。

これに対して動産の側はその反対者を、方正、実直、普遍的利益、永続性という外観のもとに、運動不能享楽欲我欲特殊利益よこしまな意図をかくしているドン・キホーテとして描き出し、ずる賢い独占者だと公言する。また、ロマンティックな城砦を仕事場として行われた破廉恥行為不品行売淫醜聞無秩序謀反を、皮肉たっぷりに数え立てる。

土地所有者――この怠惰なただ厄介なだけの穀物暴利商人

以上、マルクスの『経済学・哲学草稿』(城塚登・田中吉六訳)による。字句の改変あり。太字は引用者。
第三者に仮託して「彼らはその反対者をこう描きだす」としているが、罵倒の語彙はマルクスのもの。少なくとも語彙を選んだのはマルクス。
マルクスの攻撃性。侮蔑と罵倒のパッション。
まず闘争心があり、しかる後マルクスあり――たいがいの指導者がそうであるように。

同じく『草稿』から。先行する経済学を代弁して曰く、――
国民経済学は、就業していない労働者、その労働関係の外部にいる限りでの労働人間を認めない。泥棒、詐欺師、乞食、失業者、飢えている労働人間、窮乏した犯罪的な労働人間、これらは国民経済学にとっては実存せず……

『ルイ・ボナパルトのブリュメール18日』では、自身の言でルンペン・プロレタリアを罵倒して、――
あやしげな生計をいとなみ、あやしげな素性をもつ、くずれきった道楽者とならんで、おちぶれて山師仕事に日をおくるブルジョア階級の脱落者にならんで、浮浪人、元兵士、元懲役囚、徒刑場からにげてきた苦役囚、ぺてん師、香具師、たちん坊、すり、手品師、ばくち打ち、ぜげん、女郎屋の主人、荷かつぎ、文士、風琴ひき、くずひろい、とぎや、いかけや、こじき、一口にいえば、あいまいな、ばらばらの、あちこちになげだされた大衆、フランス人がラ・ボエームとよんでいる連中……(「マルクスが浮浪者を憎んだこと」